この10月にNHKテレビの「視点・論点」で話す機会をいただいた。10分間、ひとりカメラに向かいながら語る番組である。今回で3回目。昨年は、新型コロナウイルスの感染対策のため大学の研究室からリモートで話したが、今年は渋谷のスタジオでの収録になった。

テーマは、「『転身力』とは」。今年の6月に『転身力 「新しい自分」の見つけ方、育て方』(中公新書)を書いたことから依頼されたのだろう。

人生100年時代といわれるように寿命が延びていることから、一つの仕事や働き方だけで一生を過ごすことは困難になっている。どこかで切り替えが求められる。同時に30年も40年もずっと同じ仕事をするのでは、他の仕事を経験する機会を失うのでもったいない。同じ働き方を20年もすれば、飽きてしまい、マンネリに陥ることにもなる。一度しかない人生をもっと大切にすべきだということで、働き方や生き方を変える力を転身力として述べた。

取材をしていると、美容師、大学教授になったという転身の結果よりも、自らの可能性に対してどういうスタンスを取っているかが大切だと感じてきた。転身力とは、「新たな自分を見つけるために、自らの可能性を探る力」と定義して話してみた。そのため起業や転職、独立といった職業を変えるレベルだけではなく、現在の立場のままで、副業や兼業、趣味やボランティア、学び直しなどに並行して取り組む事例も転身の対象とした。いずれにしても中高年期の「もう一度人生が始まるタイミング」にスポットを当てた。

この番組は出演者の語りのみで構成されている。私の顔だけが10分間画面にずっと映っているのでは視聴者にとっても辛いだろう。適宜、話のポイントを図表やフリップで示すことによって目を休めてもらうように工夫した。

収録を終えたときに感じたのは、カメラを前に一人でしゃべり続ける難しさである。対面で話すときには、相手が多数でも、顔つきを見ることができる。質問に手を挙げてもらってリアクションも確認できる。リモートにおいてもチャットやサイトの掲示板を使って意見交換は可能である。相手の反応を確かめながらしゃべる私のようなタイプでは受け手が見えないと落ち着かない。伝えたい想いが空回りしている感じが残ってぎこちなくなる。カメラを前にして堂々としゃべるアナウンサーはやはりプロなのである。

放送の終了後、番組を見た知人からいろいろな感想が寄せられた。SNSで番組出演の予定を事前にアップしていたからだ。意外だったのは、「転身力」というキーワードに対して、同世代の女性が前向きな反応を示していることだった。「私もこれから何かできるかもしれない」「次のやるべきことを考えています」「マンネリにならず自分の可能性を信じたい」といった内容だ。今後のことに対して目が向いている。一方で、「転身力」を自分に引き直している男性のコメントはなかった。中高年期も女性の時代かもしれない。

ZAKZAK2022.11/29 15:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20221129-LSFBGWIILRLIFDFTDXW3JX7AUA/

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